母の涙を見たのは、後にも先にもその時だけ。
親不孝なことは、もうしないと心に誓ったのもその時でした。

それは、ゴジラが復活に向けて動き出した頃ですから、
1982年、もしくは1983年だったと思います。

当時、大学生だったボクは、学校に行くと言って家を出ては、
名画座(今はもうあんまり無いでしょうけど、ロードショーから
落ちた映画を安く上映する映画館が、昔はたくさんあったんです)に
通う日々を繰り返していました。
様々なテーマに基づいて、2本立てや3本立てと、プログラムされる中で、
特に、ボクの心を熱くしたのが、ゴジラを含む東宝特撮シリーズでした。

子供の頃にも、随分観たつもりでいたんですけど、
意外に観ていないことがわかり、学校のある降りるべき駅で降りず、
その先にある違う街の映画館に1週間、2週間という単位で
通い、東宝特撮のほとんどを鑑賞しました。

そして、映画を観て、熱くなったボクの心を更に熱くしたのが、
タイミング良く発売になったヤマカツさんのソフビ怪獣シリーズでした。

海洋堂さんやボークスさんの高額なガレージキットしか、
怪獣の立体物が存在しなかった時代に、1個¥500という嬉しい価格。
ゴジラ、アンギラス、バラゴン、メカゴジラの4種が発売され、
もうボクの心は、それら怪獣のソフビ人形の虜になりました。

普通、みなさん、というか、大人の方は、ソフビ人形を買ったら、
どんな楽しみ方をするのでしょう?

ボクは、これら怪獣のソフビ人形を買った瞬間から、
どうやって楽しむかは決めていました。

まず、自分の部屋に入り、Nゲージの鉄道模型用線路を床にレイアウト。
そして、あるだけのカセットテープと、ビデオテープのケースを
ビルに見たてて街を建設。
通りには、もちろんトミカを忘れません。

いつしかそこには、破壊されるのを待つ都市が出現したのです。

そして、破壊の時はやってきました。
CDコンポに、伊福部昭さんの「オスティネート」を入れ、BGMスタート。
海側と設定した方向から、ゴジラ、アンギラスが上陸
(ガイガンの時のシチュエーションですな)。
山側から、バラゴン。
そして、空中からは、メカゴジラ。
まさに、一戦の火ぶたが切られようとしたその時、
ボクの部屋のドアがなんの前触れも無く、開いたのです。

”パカーン!”
と、突然、頭部に激痛が走りました。
そうです。
一戦の火ぶたを切ったのは、ゴジラの放射熱線ではなく、
母の平手だったのです。

「アンタ、大学生にもなって何やってんの!」
と、怒っているけれども、なんか悲しげな母の顔。

そして、目頭には、涙がキラリ。

哀れみの目で見つめられるが、何も言い返せない19歳のボク。



”そっかぁ、大人になってから怪獣ごっこをすると
親を悲しませるのかぁ・・・”ということに初めて気が付きました。


もう、”怪獣ごっこ”はしません。


開発部 ”T" でした。